ツール・ド・フランスとTwitter

ツール・ド・フランスが終わってしまいました....


私、サイクルロードレースが大好きでして。
春から秋までのシーズンには、JSPORTSのサイクルロードレースに夢中なわけです。とりわけ、ツール(通ぶって、略記させていただきます)、ジロ・デ・イタリア(ヴエルタはあまり好きではない)が始まると、開催期間中21日間、眠い目をこすりながら、夜毎遅くまでTVにかじりつくという日々を過ごし。終わってしまうと、虚脱感に襲われ、むしろ何もする気がなくなるという困った状況に陥るわけです。

今年のツールは、絶対王者アルベルト・コンタドールが早々からタイムロス。
さらに、現アルカンシェルトル・フースホフトやら、フランス人のアイドル:トマ・ボクレールやら、本来ならば、ツール総合優勝争いには縁もゆかりもないはずの(でもキャラクターはすごく濃い)脇役たちが総合争いを盛り上げ...
そして過酷なコースレイアウトの山岳ステージで、挽回を期するコンタドールが捨て身の攻撃。
その攻撃を、宿敵コンタドール打倒に闘志を燃やすアンディ・シュレックが、コンタドールを上回る勇気と破壊力で撃破。
と思ったら、エターナルセカンド(万年二位)と不名誉なあだ名を持ち、実況からは『小さじ一杯の運がない』と散々な言われようのカデル・エヴァンスが、苦節10年、中年の星としてついにツール総合優勝を遂げたと...
まぁ、要は近年まれにみる好勝負が連続したツールだったわけです。

特に総合優勝争いのターニングポイントになるであろうと、事前から予測されていた第18ステージ。
実際、ツールの歴史に残る名勝負が行われたわけですが、この時は、世界中でたくさん人たちが、このステージに対するTweetを残しています。

例えば、本場欧州で戦う土井雪広選手 @YukihiroDoi は、
『今日はガリビエ裏解説でもしちゃおうかな!』
というTweetとともに、実際にレースコースであるガリビエ峠を走った経験と、選手ならではの目線から、まさに裏解説を何度もTweetしてくれて、ファンである我々を盛り上げてくれました。

自分のフォローしている範囲では、残念ながらツール出場を果たせなかったロビー・ハンター選手 @RobbieHunter や、マキュアン会長 @mcewenrobbie らも土井選手同様、ツールの実況を観ながら、選手目線でのさまざまなTweetをしており、お互いに『今の状況どう思う?』的なやり取りをしてましたね。

国内でも、 #jspocycle のハッシュタグで(自分を含め)ファンがめいめいにTweetしておりましたが、その中でも秀逸なTweetを繰り返す @rue_lle さんなど、明らかにTL上でその存在感を増す方々が生まれてきていたのも、この業界の末端にかかわるものとしては興味深いものでした。

ツール・ド・フランスという、とにかく長い(期間も長い、一日のレース時間も長い、そして退屈なレース展開が続く時間帯も長い)スポーツにおいて、Twitterというおもちゃは、実に有効だと思います。レース展開上、放送内容が冗長になり始めると、皆さんTwitter上で遊び始め、来るべき勝負の時間までを有効(...?)に楽しむという、実にユニークな流れがTwitterで実現されたわけです。


ところで。
Twitterでは、気軽に発言が出来るがゆえに、その発言が思わぬ波紋を起こしてしまうことがあります。
例えば、今回惜しくもツール出場を逃した新城幸也選手が、JSPORTSの解説として登場した第4ステージの放送中、新城選手の盟友でもあり、ともにツール出場を過去果たした別府史之選手が、以下のようにTweetしました。
『適当なこと言い過ぎです。』
ちょうど、新城選手がレース中の裏話として、選手たちがレースをしながらレース観戦中の女の子を値踏みをする話をしていたところだったので、私自身、とてもドキッとしました。新城選手の先輩格である別府選手が、新城選手の発言を不愉快に感じたものと思ったのですね。
同様のことをは他の人も感じたらしく、何人かが別府選手のTweetの真意を心配するTweetを繰り返しました。
しばらくのち、別府選手自身から、以下Tweetがあり、ことは杞憂であったことが示されたのですが。
『あれ? 最近のUCIのルールのくだりだったのだけど....』
『ブリュイネール監督とUCIの戦いは長く続いているけど、内容が幼稚すぎて苦笑いのものが多い。』
『それでシワ寄せ食うのは、いつでもチームやスタッフや選手やスポンサー..。』

もうひとつ例を挙げます。
2008年、ツール7連覇を遂げ、一度は引退を表明したランス・アームストロング @lancearmstrong がツールに再び出場を果たしたとき、メディアの取材には対応しないのに、Tweetは繰り返すランスの姿勢が、記者たちから非難を受けたことがありました。
ランスにすれば、レースに集中したいのに、取材対応を行うことは煩わしいうえに、自らの発言を正確に伝えてくれないメディアに対し、嫌気がさしていたことは想像に難くありません。
しかし、メディアサイドからすれば、ランスの『Livestrong』等の社会活動も以前からきちんと報道、アピールに協力してきたにもかかわらず、Twitterという新しい道具を手に入れたとたん、見限られたようにも感じたのでしょう。
加えて、ランスのフォローワーは、今現在でも300万人近くおり、その影響力の大きさから、既存メディアを必要としないのではないかという危惧が生じたものと思います。


Twitterは確かに便利なツールです。
ツールでも、数多くの選手たちがTwitterを利用していて(※フランス人選手はあまり利用しないそうですけど)、ニュースがリリースされる前に、レース直後の選手たちの生の声を確認できることも多くなりました。ファンが直接選手に自分のメッセージを届けることもできて、比較的気軽に返事を返してくれる選手もいます。

Twitterは、ツールに限らずスポーツ・ファンの、スポーツ観戦をより盛り上げてくれるツールであることは間違いありません。

しかし、Twitterは『不完全であることを良しとした』情報伝達ツールであることを忘れてはいけません。
文字制限があり、端切れのコメントしかできないTwitterで、自らの伝えたいことすべてを伝えることなど、できるわけもありません。
例え同じ人物の発言であっても、一部の発言がTL上で省略される可能性のある、細切れTweetをもとに、フォローワーが発言者の真意を完全に理解できていると考えること自体、無理と言えます(危険と言ったほうが正確かもしれません)

見方を変えれば、不完全であることが最大の魅力であるTwitterの姿を理解することなしに、Twitterを過信することは、ユーザーとしてあるべき姿ではないと私は考えます。


話がずれました
というか、本Blogのテーマからずれました

次回、軌道修正ができる...かな...