SEOの方法論④ キーワードの選定

引き続き、SEOの方法論について書きたいと思います。

『3.ターゲットとするキーワードに関する、優良なコンテンツが存在していること』のイントロダクションとして、本項ではキーワードの選定を取り上げます。


SEOについてのお客さんからの相談でよくあるパターンは、すごくざっくりとしたキーワードでのSEOを望まれるケース。例えば、『サーバ』、『オイル』、『おにぎり』など、ごく汎用的な一般名詞などですね。
このようなキーワードは、検索結果も多いため、SEOの難易度も上がるばかりでなく、そもそもターゲットとしたいユーザーを十分にホームページへ誘導できない危険性もあり得ます。

本項では、以下『ステーキ』というキーワードを例にご説明します。

+競合を考える
今日現在、『ステーキ』でGoogle検索を行うと、約3910万件の検索結果が表示されます。
一方、『ステーキ肉』で検索すると検索結果は約266万件。
『Tボーンステーキ』で検索すると検索結果は約156万件になります。

ライバルが少ないほうが勝つ確率が上がるのは当たり前の話ですね。
SEOというのは、絶対値としてのSEO対策レベルの向上も必要なのですが、相対値観点からのプランニングが結構重要だったりします。とてもイメージ的な言い方になりますが、SEO偏差値の平均:65で、かつライバルが3910万サイト存在するキーワード:『ステーキ』で戦うよりも、SEO偏差値の平均:55で、かつライバルが156万サイト存在するキーワード:『Tボーンステーキ』を戦場に選んだ方が、勝ち残りやすくなるということですね。

やみくもにざっくりとしたキーワードを選定せず、勝てる見込みのあるキーワードを選定するのも、SEOにおけるキーワード選定の一つのポイントです。


+あなたの特性を考える

  • ステーキをテーマにバラエティに富んだメニューを提供するチェーン展開レストラン
  • 素材にこだわり神戸牛だけを提供するステーキハウス
  • ステーキ肉を販売する通販サイト
  • ステーキの美味しい作り方(レシピ)を情報提供するレシピ情報サイト
  • ステーキ用の鉄板皿を制作するメーカー  などなど

上記に挙げたのは、SEOキーワード:『ステーキ』を望まれると想定されるホームページ、もしくはWebサイト運営者(運営社)を想像してみたものです。
もちろん、鉄板皿メーカーさんも、『ステーキ』で検索一位になればうれしいでしょうけど、率直あまり意味がないと思います。
『意味がない』の理由を補足すると。
SEOの目的は、以前も書いたとおり、売り上げ向上等、企業の事業発展に寄与させることです。けっして、SEOそのもの、つまり検索順位の向上が最終目的ではありません。
『ステーキ』で検索する人の多くは、おそらくはステーキを食べることに関する情報、つまりレストランだったり口コミ情報だったりを探すことが目的であり、ステーキ用の鉄板皿を求める方は、割合としては少ないでしょう。ステーキを食べたいと思っている人が、ステーキ用鉄板皿メーカーのHPに来ても、大半はすぐに去って行ってしまうはず。もちろん、ステーキ皿の売り上げ拡大は望みにくいはずです。

鉄板皿メーカーさんが、キーワード:『ステーキ』で検索順位一位になったとしても、PV(ページビュー)が上がるばかりで、Webサーバへの負担が増えるばかりでしょう。鉄板皿の売上向上もあるでしょうが、Webサーバへの負荷対策を考えたら、マイナスになるかも...しれませんよ。

露出が増えれば広告宣伝効果が上がるというのは、一面では正論です。しかしながら、マス・マーケティングからよりミクロなマーケティング、つまりターゲット・セグメンテーションを絞ることができるのが、Webマーケティングのメリットでもあります。

『あなたの特性』を把握し、後述の訪問者について考えるたうえで、よりROIの高いキーワードを選定するのも、SEOにおけるキーワード選定の一つのポイントです。


+訪問者を選定する
昔、とある量販店の新店開店時に店頭販売応援に立っていた時の話ですが。
私の接客を見た、その量販店の社長から、お褒めの言葉を頂戴したことがあります。
『君は、お客さんの購入するものを、君が決めることのできる接客が出来ている。それはとても重要なことだ』

これを、ホームページの運営に置き換えると。
ホームページ、もしくはオーナーたる企業側の求める訪問者を効率よく誘導することが、ホームページ運営に求められることであり、その手法の一つがSEOであると言えます。
『ステーキ用の鉄板皿を制作するメーカー』のHPに、ステーキのレシピを知りたい人が訪問しても意味がないわけですし。
例えば、神戸駅前で営業する『素材にこだわり神戸牛だけを提供するステーキハウス』のHPに、神戸を訪れる予定のない人のPVばかりが積みあがっても、実店舗の売り上げには貢献しないわけです。

インターネットは、幅広く多数の情報を効率よく収集できるメリットを持つ反面、情報が多すぎて、本当に欲しい情報が探しにくい(埋没してしまう)という二面性を持ちます。

とあるクライアントさんで実際に経験した例を模すと。
キーワード:『ステーキ』でのSEO向上を望んだクライアントさんのHPにおけるアクセスログ解析を行った結果、キーワード:『ステーキ』での検索サイトから流入した訪問者の訪問時間に対し、キーワード:『神戸牛 ステーキ』という複合キーワードで検索サイトから流入した訪問者の訪問時間の方が4倍以上長く、かつ店舗MAPへの誘導率がきわめて高いという結果が出たことがあります。

1000人の冷やかし客よりも、10人の見込み客を獲得する。
この考え方は、SEOにおけるキーワード選定において、極めて重要な軸となる考え方です。


+表記の違いを考える
例えば、『Server』についての日本語表記は、『サーバ』と『サーバ』が存在します。
IBMの場合、社内表記ルールにより『サーバ』が正しい表記ですが、HP(ヒューレットパッカード)では『サーバー』で表記されています。

もし、IBMの代理店を対象に、ラックを販売するメーカーがホームページに製品情報を掲載する場合、『サーバー』ではなく、『サーバ』と記載しないと、SEO効果が下がることが考えられるわけですね。

実際には本例の場合、『サーバ』と『サーバー』はGoogleでは名寄せをしてくれるので、おそらく(あくまで推測です)SEO効果の違いは出ないと思われます。
しかし、このように名寄せをするほど一般的でない言葉をキーワードに設定する場合や、海外製品の日本語音読みなどについては、十分な注意が必要です。


私は、サイクルロードレースが好きなのですが、とても好きなレースのひとつに、『ロンド・ファン・フラーンデレン(Ronde van Vlaanderen)』というレースがあります。
このレース、ベルギー語(フラマン語?)だと『ロンド・ファン・フラーンデレン(Ronde van Vlaanderen)』ですが、『ツール・デ・フランドル(Tour des Flandres)』とも表記されます。
ちなみに、『ロンド・ファン・フラーンデレン』だと検索結果は約 26,800 件 。
ツール・デ・フランドル』だと検索結果は約 54,900 件です。
あくまで私の印象ですが、通をきどるファンは、『ツール・デ・フランドル』と呼ぶような気がします(私もそうです(笑))。
このようなケースだと、『ロンド・ファン・フラーンデレン』と『ツール・デ・フランドル』の両方のキーワードをSEO設定する必要があるでしょうね。
DVDを販売するJSPORTSさん、『ツール・デ・フランドル』でしかヒットしませんよ。改善の余地ありかと思います、うん...




SEOにおけるキーワードの選定については、他にもポイントはいくつもあるのですが、とりあえず基本と思われるものをピックアップしてみました。最後の表記の揺れについては、キーワードによってはまったく関係のない要素ではありますが、関係する場合、致命的な失点となるケースがあるため、取り上げました。

ちなみに、ウィキペディアの『サーバ』の項に『サーバ』/『サーバー』の表記ゆれについて記載があります。IBMは『サーバー』表記が標準との記載がありますが、これは間違いです。

ウィキペディアの間違い見つけると、ちょっとうれしくなるのは、私だけでしょうか....( ̄ー ̄)